H.4.1とは何か、いつ公表されるのか?
H.4.1の正式名称は「Factors Affecting Reserve Balances of Depository Institutions and Condition Statement of Federal Reserve Banks」です。直訳すると「預金取扱機関の準備預金残高に影響する要因と、連邦準備銀行の財務状況」で、FRBの貸借対照表(バランスシート)を週ごとに切り出した統計と考えると分かりやすいでしょう。公表は原則として毎週木曜の米東部時間16時30分で、FRBのウェブサイトの「Statistical Releases」に掲載されます。
日本時間に直すと、米国が夏時間の期間は金曜の5時30分、冬時間の期間は金曜の6時30分です。2026年の夏時間は11月1日(日)に終わるため、10月29日(木)公表分までは5時30分、11月5日(木)公表分からは6時30分になります。東京市場が開く前に数字が出そろう形です。
表には2種類の数字が並びます。1つは水曜日までの1週間の「日々の残高の平均(Averages of daily figures)」、もう1つは水曜日時点の残高(Wednesday)です。10月15日公表分なら、10月8日から14日までの平均と、10月14日(水)の残高が載っています。週の途中の出入りをならして傾向を見るなら平均、ある日の断面を見るなら水曜日の値、と使い分けます。
2026年10月14日時点で、FRBは何をどれだけ持っているのか?
資産の側を、週平均の値で抜き出しました。単位はFRBの表と同じ100万ドルで、右の2列は前週比と前年比(2025年10月15日の週との比較)です。
| 項目 | 10月14日の週 | 前週比 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| Reserve Bank credit(信用供給の合計) | 6,707,650 | +11,680 | +162,126 |
| 保有証券の合計 | 6,470,368 | +5,040 | +185,272 |
| うち米国債 | 4,569,911 | +5,019 | +373,157 |
| 短期国債(Bills) | 565,492 | +4,725 | +369,999 |
| 中長期国債(名目) | 3,617,961 | 0 | +38,970 |
| 物価連動国債 | 279,965 | 0 | −30,207 |
| 住宅ローン担保証券(MBS) | 1,898,110 | +21 | −187,885 |
| 貸出(Loans) | 11,350 | +3,606 | +5,148 |
6,707,650百万ドルは、約6兆7,077億ドルです。そのうち保有証券が6兆4,704億ドルで、資産のほとんどは国債とMBSでできています。米国債の4兆5,699億ドルを中身で分けると、満期まで長い中長期国債が3兆6,180億ドル、満期が1年以内の短期国債が5,655億ドルです。
1年で増えたもの、減ったものは何か?
前年比の列を見ると、資産の中身の入れ替わりがはっきり出ています。短期国債は1年前の約1,955億ドルから5,655億ドルへ、およそ2.9倍になりました。増えた額は3,700億ドルで、保有証券全体の増加額1,853億ドルの2倍に当たります。
反対に、MBSは1,879億ドル減りました。物価連動国債も302億ドル減っています。中長期国債(名目)は390億ドルの増加にとどまり、前週からは動いていません。MBSなどが減った分を上回る額の短期国債が積み上がり、保有証券の合計は1年で約2.9%増えた、という形です。
どの資産をどれだけ買うか、満期を迎えた分をどう扱うかは、FOMC(連邦公開市場委員会)の決定と、ニューヨーク連銀が公表する実施要領で決まります。H.4.1はその結果を数字で示す統計なので、増減の理由まで知りたいときは、FOMCの声明とあわせて読むのが確実です。

負債の側では、お金はどこにあるのか?
FRBが資産を買うと、その代金は負債の側のどこかに現れます。H.4.1では、銀行がFRBに預けている「準備預金(Reserve balances)」、世の中に出回っている「流通現金(Currency in circulation)」、米財務省がFRBに置いている口座「TGA(Treasury General Account)」、FRBが資金を吸収する「リバースレポ」が主な行き先です。
| 項目 | 10月14日の週 | 前週比 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 準備預金 | 3,022,140 | −7,519 | +3,112 |
| 流通現金 | 2,488,264 | +4,443 | +69,989 |
| TGA(財務省の口座) | 883,373 | +3,120 | +73,780 |
| リバースレポ | 332,191 | +2,665 | −21,783 |
準備預金は約3兆221億ドルで、1年前とほとんど同じ水準です。資産が1,621億ドル増えたのに準備預金がほぼ横ばいなのは、流通現金が約700億ドル、TGAが約738億ドル増えて、その分を吸い込んだためと読めます。TGAは国債の発行や税収で大きく動くので、準備預金を見るときは、TGAの増減を一緒に確かめておくと読み違えが減ると言われています。
日本銀行のマネタリーベースと並べると、何が見えるのか?
日本銀行は、日本銀行券の発行高、貨幣の流通高、日銀当座預金を足した「マネタリーベース」を毎月公表しています。2026年10月2日公表の9月分は、平均残高が532兆8,464億円で前年比15.2%の減少でした。うち日銀当座預金は413兆6,678億円で18.3%減っています。7〜9月期の前年比は14.9%減で、2025年から減少が続いています。
| 中央銀行 | 見ている数字 | 前年比 |
|---|---|---|
| FRB | Reserve Bank credit(2026年10月14日の週) | +2.5% |
| FRB | 準備預金(同) | +0.1% |
| 日本銀行 | マネタリーベース(2026年9月平均) | −15.2% |
| 日本銀行 | 日銀当座預金(同) | −18.3% |
FRBの前年比は、H.4.1の「前年比」の列から1年前の値を逆算して出しました。FRBの資産の合計が小幅に増え、銀行の預け金も横ばいなのに対し、日本銀行は当座預金が2割近く減っています。ただし、FRBの数字は資産の側、日本銀行のマネタリーベースは負債の側の集計で、定義はそろっていません。比べられるのは「増えているか、減っているか」という向きまでで、数字の大きさを直接比べることはできません。

FXでドル円を見るとき、H.4.1はどう役に立つのか?
為替相場を動かす材料としては、政策金利や物価の統計のほうが注目されやすく、H.4.1が出た直後に相場が大きく動くことは多くありません。それでも、中央銀行が市場にどれだけ資金を出しているかは、金利や資金の流れの背景になります。日米の中央銀行の資産が逆の向きに動いていること自体が、両国の金融政策の局面の違いを映しています。
確かめる手順は3つです。まず、毎週木曜のH.4.1で「Reserve Bank credit」の前年比を見ます。次は短期国債とMBSの行で、中身の入れ替わりの確認です。最後に、準備預金とTGAを並べ、資金が銀行に残っているのか財務省の口座に移ったのかを見ます。毎月第2営業日に出る日本銀行のマネタリーベースと並べれば、日米の向きの違いを1つの表で追えるはずです。
政策金利の決定は9月の日米欧英の中銀|利上げ3つと据え置き1つを表で比べるで、日本銀行の物価の見方は日銀の基調インフレ3指標|刈込平均値・加重中央値・最頻値の違いと2%との距離で扱っています。

H.4.1に関するよくある質問
H.4.1は日本時間の何時に出ますか?
週平均と水曜日の値は、どちらを見ればよいですか?
短期国債が増えると何が変わりますか?
日本銀行のマネタリーベースと同じものですか?
数字の出どころはFRB「Factors Affecting Reserve Balances - H.4.1」(2026年10月15日公表)、日本銀行「マネタリーベース」(2026年9月分、10月2日公表)です。

