マネーの羅針盤Money Compass

マーケット分析

日銀の基調インフレ3指標|刈込平均値・加重中央値・最頻値の違いと2%との距離

マーケット分析公開:2026年10月15日文:マネーの羅針盤 編集部
霧の中へ伸びる高層ビル群を真下から見上げた写真
本記事はマネーの羅針盤 編集部が執筆した一般的な情報提供です。日本銀行と総務省の公表資料の内容を整理したもので、相場の予想や特定の取引・商品の勧誘ではありません。FXは差金決済取引であり、為替変動やレバレッジにより元本を超える損失が生じるおそれがあります。日程や内容は変更されることがあるため、最新の情報は日本銀行の公式発表でご確認ください。本サイトはアフィリエイト広告(PR)を利用しています。

日本銀行は、全国消費者物価指数(CPI)の品目ごとの値動きから、物価の「基調」を測る指標を毎月公表しています。刈込平均値、加重中央値、最頻値の3つと、上がった品目と下がった品目の比率です。2026年9月25日に公表された8月分(2025年基準)は、刈込平均値が前年比+2.2%、加重中央値が+1.5%、最頻値が+1.3%でした。同じ月の生鮮食品と特殊要因を除いた総合は+2.6%です。同じ8月の物価なのに、物差しによって1.3%から2.6%まで開きがあります。日本銀行が公開している月次データを編集部で並べ、3つの指標の作り方と、2%との距離の読み方を整理します。

基調的なインフレ率を測る指標とは何か?

ふだん目にするCPIの前年比は、すべての品目の値動きを、家計の支出に占める割合(ウエイト)で平均したものです。この平均は、ある月に一部の品目だけが大きく上がったり下がったりすると、それに引っ張られます。エネルギー価格の急変や、政策による一時的な値下げなどがその典型です。

そこで日本銀行は、品目ごとの前年比を小さい順に並べた「分布」に注目し、極端な動きを除いた物価の中心を測る指標を作っています。公表は、原則として全国CPIの公表日の2営業日後の14時をめどに行われます。8月分の全国CPIが公表されたのは9月18日(金)で、連休をはさんだ2営業日後の9月25日に、この指標が更新されました。

野菜と果物が並ぶ屋外の市場の店先の写真
品目ごとの値動きを、小さい順に並べてから中心を探す

刈込平均値・加重中央値・最頻値は、どう違うのか?

3つとも、品目ごとの前年比の分布から作ります。違うのは、分布のどこを「中心」とみなすかです。

基調的なインフレ率を測る3つの指標(日本銀行の公表資料をもとに編集部が整理)
指標作り方2026年8月
刈込平均値前年比の分布の上下の端にある品目を、ウエイトで一定の割合ずつ除き、残りを平均する+2.2%
加重中央値品目を前年比の順に並べ、ウエイトを累積してちょうど真ん中に当たる品目の前年比を取る+1.5%
最頻値分布の中で最も品目が集まっている前年比を取る+1.3%

刈込平均値は、極端に上がった品目と下がった品目を両側から切り落とした平均です。加重中央値は、平均を取らずに真ん中の1点を見ます。最頻値は、いちばん多くの品目が集まっている山の頂上の位置です。分布が左右対称なら3つはほぼ同じ値になりますが、一部の品目が大きく上がって分布の右側が長く伸びているときは、刈込平均値が高く、最頻値が低く出やすくなります。

2026年8月の並びは、刈込平均値の2.2%が最も高く、加重中央値の1.5%、最頻値の1.3%の順でした。多くの品目は1%台の値上がりにとどまり、一部の品目の大きな値上がりが平均を押し上げている形と読めます。

2026年5月から8月の推移を並べる

日本銀行が公開している月次データ(2025年基準)から、直近4か月分を編集部で抜き出しました。値は小数第1位に丸めています。

基調的なインフレ率の推移(前年比、%/日本銀行の月次データから編集部が作成)
月除く生鮮食品・特殊要因刈込平均値加重中央値最頻値上昇品目比率
2026年5月2.61.70.81.171.6
2026年6月2.61.81.11.272.6
2026年7月2.32.01.11.472.4
2026年8月2.62.21.51.374.3

4か月で、刈込平均値は1.7%から2.2%へ、加重中央値は0.8%から1.5%へ上がりました。一方、除く生鮮食品・特殊要因の総合は2.3%から2.6%の間で横ばいに近い動きです。総合の数字が変わらないあいだに、分布の中心のほうが少しずつ上へずれてきたことになります。

上昇品目比率は、前年より値上がりした品目の割合です。8月は74.3%で、下落品目比率は21.2%でした。4品目のうち3品目近くが前年より高くなっています。値上がりが一部の品目に偏っているのか、多くの品目に広がっているのかを見るときに、この比率が手がかりになります。

木の机に置かれたグラフの印刷された紙とコーヒーカップの写真
同じ月の物価でも、物差しを変えると数字が変わる

「特殊要因除く」とは何を除いているのか?

表の左端の「除く生鮮食品・特殊要因」も、日本銀行が独自に作っている系列です。総務省のCPIから、消費税率の変更、教育の無償化、携帯電話の通信料の引き下げ、旅行支援、エネルギーの負担軽減策などの政策の影響を除いています。政策で一時的に下がった値段や、反動で上がった値段が混ざると、物価の流れが読みにくくなるためです。

8月分では、除く生鮮食品・特殊要因が+2.6%、さらにエネルギーを除くと+2.2%、食料とエネルギーを除くと+1.8%でした。食料とエネルギーという値動きの大きい品目を外すほど、数字は下がっていきます。基調の3指標の加重中央値1.5%や最頻値1.3%と並べると、食料とエネルギー以外の品目では、値上がりのペースがまだ2%に届いていない様子がうかがえます。

為替や金融政策を見るとき、どこに注目すればよいか?

日本銀行は2%の物価安定の目標を掲げており、物価の基調が2%に近いかどうかは、政策金利の判断に関わります。9月会合の「主な意見」でも、基調的な物価上昇率について「2%にかなり近づいている」「概ね2%に達している」と委員の言い回しが分かれていました。3つの指標のどれを重く見るかで、2%との距離の感じ方は変わります。

2026年8月の各指標と2%との差(編集部計算、%ポイント)
指標8月の前年比2%との差
除く生鮮食品・特殊要因2.6%+0.6
刈込平均値2.2%+0.2
加重中央値1.5%−0.5
最頻値1.3%−0.7

刈込平均値だけを見れば2%を上回っていますが、加重中央値と最頻値はまだ下にあります。金利の見通しは為替相場の材料の1つなので、FXでドル円を見る場合も、ヘッドラインの数字1つで判断せず、物差しごとの差を確かめておくと読み違えが減ります。ただし、どの指標が政策判断でどれだけ重視されるかは公表資料からは決められず、相場の方向を示すものでもありません。

青空と雲を背にしたガラス張りのビルの写真
次の更新は、全国CPIの公表から2営業日後

次の更新はいつか?

9月分の基調の指標は、総務省が9月分の全国CPIを公表した日の2営業日後、14時をめどに更新されます。全国CPIの公表日は総務省統計局の公表予定で確かめられます。日本銀行の次の金融政策決定会合は10月29・30日で、30日には展望レポートの基本的見解も公表される予定です。9月分の基調の指標は、会合の前に出そろう最後の物価の材料の1つになります。

9月会合で何が議論されたかは日銀「主な意見」9月会合分|利上げ派と据え置き派の論点を並べるで、各国の中銀の決定は9月の日米欧英の中銀|利上げ3つと据え置き1つを表で比べるで扱っています。

基調的なインフレ率に関するよくある質問

刈込平均値とは何ですか?
CPIの品目ごとの前年比を並べた分布から、上下の端の品目をウエイトで一定の割合ずつ除き、残りの品目を平均した値です。2026年8月は前年比+2.2%でした。
3つの指標はいつ公表されますか?
原則として、全国消費者物価指数の公表日の2営業日後の14時をめどに、日本銀行が公表します。2026年8月分は9月25日に公表されました。
なぜ3つの指標で数字が違うのですか?
分布のどこを中心とみなすかが違うためです。一部の品目が大きく値上がりしていると、平均を使う刈込平均値は高めに、最も品目が集まる位置を取る最頻値は低めに出やすくなります。
上昇品目比率は何を表していますか?
前年より値上がりした品目の割合です。2026年8月は74.3%、下落品目比率は21.2%でした。値上がりが多くの品目に広がっているかを見る手がかりになります。

数字の出どころは日本銀行「消費者物価のコア指標」(基調的なインフレ率を捕捉するための指標の月次データ、2026年9月25日掲載)、総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」、日本銀行「金融政策決定会合の運営」です。表の推移と2%との差は、日本銀行の月次データから編集部が作成しました。

羅
マネーの羅針盤 編集部
FX・投資情報ブログ「マネーの羅針盤」編集部。公的統計と各社公式資料の一次情報にあたり、初心者がつまずく論点を事実ベースで整理して発信しています。