失業率と有効求人倍率は、出どころが違う2本の統計です
まず、2つの統計の作り方を並べます。どちらも毎月、同じ日の朝に公表されることが多く、8月分はともに10月2日(金)でした。
| 項目 | 労働力調査 | 一般職業紹介状況 |
|---|---|---|
| 所管 | 総務省統計局 | 厚生労働省 職業安定局 |
| 数え方 | 抽出した世帯への調査 | ハローワークの求人・求職の記録 |
| 代表的な数字 | 完全失業率 2.5% | 有効求人倍率 1.18倍 |
| 前月との比較 | 0.1ポイント上昇 | 同水準 |
| あわせて出る数字 | 就業者 6,849万人、完全失業者 180万人 | 新規求人倍率 2.06倍、正社員有効求人倍率 1.00倍 |
完全失業率は「仕事を探しているのに仕事がない人」が、働く意思のある人全体(労働力人口)の何%かを示します。有効求人倍率は、ハローワークに出ている求人の数を、ハローワークで仕事を探している人の数で割ったものです。片方は人に聞いた答え、もう片方は窓口に積み上がった書類の数で、分母も分子も別のものを数えています。
労働力調査の8月分で、何が分かったのか?
労働力調査の「結果の概要」から、主な数字を抜き出しました。前年同月との比較は原数値、完全失業率だけは季節調整値で前月と比べています。
- 就業者は6,849万人で、前年同月より14万人多く、2か月ぶりの増加
- 雇用者は6,213万人で39万人の増加、54か月連続の増加
- 正規の職員・従業員は3,735万人で24万人増、非正規は2,126万人で15万人増
- 完全失業者は180万人で2万人減り、13か月ぶりの減少
- 15〜64歳の就業率は80.3%で、前年同月より0.3ポイント上昇
失業率が上がったのに、失業者の数は前年より減っています。食い違って見えるのは、比べている相手が違うためです。失業率は季節調整値を前月と比べ、失業者数は原数値を1年前の同じ月と比べています。完全失業率を男女別に見ると、男性が2.8%、女性が2.3%で、どちらも前月より0.2ポイント上がりました。

仕事を探し始めた理由の内訳も載っています。「自発的な離職(自己都合)」は84万人で前年同月より4万人増え、「勤め先や事業の都合による離職」は23万人で2万人減りました。会社の都合で職を失った人が減り、自分で辞めて次を探す人が増えた形で、人手不足の局面でよく見られる組み合わせと言われています。
有効求人倍率1.18倍の中身はどうなっていたか
厚生労働省の発表では、8月の有効求人(季節調整値)は前月より0.7%増え、有効求職者も0.7%増えました。分子と分母が同じだけ増えたので、倍率は1.18倍のまま動いていません。新しく出た求人を新しく来た求職者で割る新規求人倍率は2.06倍で、前月より0.04ポイント下がりました。
| 産業 | 前年同月比 |
|---|---|
| 製造業 | +3.9% |
| 情報通信業 | +3.3% |
| サービス業(他に分類されないもの) | +0.9% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | −5.7% |
| 卸売業,小売業 | −10.2% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | −11.1% |
| 新規求人の合計 | −3.4% |
新規求人の合計は前年同月より3.4%少なく、宿泊・飲食と卸売・小売の落ち込みが目立ちます。都道府県別の有効求人倍率は、働く場所で数える「就業地別」で福井県の1.72倍が最も高く、大阪府の0.95倍が最も低くなりました。求人を受け付けたハローワークの場所で数える「受理地別」では、東京都が1.70倍、神奈川県が0.83倍です。本社のある東京で受け付けた求人が他県の職場のものだと、受理地別の東京の倍率は高く出ます。
2本の数字が別の方向を向いて見えるのはなぜか?
理由は大きく3つあります。1つ目は、数える人の範囲です。有効求人倍率に入るのは、ハローワークに求職を申し込んだ人と、ハローワークに出た求人だけです。転職サイトや人材紹介会社だけで仕事を探す人は、労働力調査では失業者に数えられても、求人倍率の分母には入りません。

2つ目は、比べ方の違いです。季節調整値の前月比と、原数値の前年同月比が同じ表に並ぶので、片方だけを切り出すと逆の印象になります。3つ目は、集計の変更です。厚生労働省は、2021年9月以降の数字に、ハローワークに来所せずオンラインで求職登録した人などを含めています。長い期間で比べるときは、この区切りをまたいでいないかの確認が欠かせません。
正社員有効求人倍率の1.00倍にも、厚生労働省の注記が1つ。分母にあたる「パートタイムを除く常用の求職者」には、派遣や契約社員を希望する人も含まれるため、厳密な意味での正社員の倍率より低く出る、と厚生労働省は説明しています。
日本銀行の判断と、どう結びつけて読むか
日本銀行は9月17・18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.25%程度に引き上げました。賃金と物価がそろって上がる流れを見極めるうえで、雇用の数字は判断材料の1つになります。失業率2.5%、有効求人倍率1.18倍という水準は、働き手が足りない状態が続いていることを示すと受け止められています。
ただし、8月分の変化は小さく、新規求人は前年を下回りました。為替の材料として見るときは、1か月の0.1ポイントの上下より、2〜3か月の向きを見るほうが読み違えが減ると言われています。日本銀行の会合で出た意見の整理は日銀「主な意見」9月会合分、物価の見方は日銀の基調インフレ3指標で扱っています。
次の発表で確かめる3つの行
- 失業率と失業者数を、比べ方ごと読む:季節調整値の前月比なのか、原数値の前年同月比なのかを先に確かめます
- 求人倍率は、分子と分母を別々に見る:8月のように両方が0.7%ずつ増えると、倍率は動かなくても求人も求職も増えています
- 新規求人の産業別を1行だけ追う:宿泊・飲食の−11.1%のように、大きく動いた業種が翌月どうなるかを見ます

雇用の2統計に関するよくある質問
完全失業率と有効求人倍率は、どちらが大事ですか?
失業率が上がったのに、失業者が減ったのはなぜですか?
転職サイトで仕事を探している人は、有効求人倍率に入りますか?
8月分の数字はいつ公表されましたか?
数字の出どころは総務省統計局「労働力調査(基本集計)2026年8月分」、厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」(いずれも2026年10月2日公表)です。

